湧水
いま湧きたつ柔らかいこの感情を
明日どうこうしようとしても遅い
時間とともに凝固して
確固たるものになってふと消える
次々溢れてはどこかへ流れていく
液体の鉛のように重く鈍く蠢く様に
どうしようもない生を感じる
ここに、命がある
再会
きみの瞳がまっすぐ向く先
痛いくらいの引力で
I love you と叫んでいる
どうして私ではないのだろう?
あの子のはにかむ無邪気さが
弾丸となって恋心を砕く
好きだよの残響
どこでかけ違えたのだろう?
じわりと傷口が広がって
後から痛みがやってくる
木枯しの季節
すべてを脱ぎ捨てなければ
新しい運命のために
フリをしている
心に鎧をまとい
体は頑丈を装う
あなたを求める一方
一人ぼっちの安寧が恋しい
眠ること、食べること
話すこと、聞くこと
興味を拾い集めては
つまらないと切り捨てる日々
誰もが舞台の上に立ち
勝敗のない空虚な試合を続ける
生まれた時から円周の一点で
中心から見ればすべて同じと知りながら
自分だけの正解を探す
フリをしている
引力
揺れる碧面を見ていると
ひどく息苦しいのは
美しさの内に命が燃えているから
凪いだ茜を仰いで
ふと恐ろしいのは
球面の外に無が垣間見えるから
金色の原を風が駆けていく
目を閉じればおいでと声がする
いま、朝が死に夜が生まれた
色を失った大地に銀のベールを被せて
ひとつずつ掬い上げるよ
ずっと前から探しているのに
もうぼんやりとしか思い出せない
その昔私を暴いた鏡
すべては流れながら
たったひとつを求めながら
こぼす涙を誰も知らない